大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(う)840号 判決

被告人 渡辺裕之

〔抄 録〕

所論は、原判示第一の窃盗未遂及び同第二の窃盗の事実については、昭和四七年七月二〇日に起訴猶予処分がなされており、起訴猶予処分は、それが行われると、関係者に通知され、外部的な審査の対象ともなるものであるから、原則として変更できないという内部的な拘束力があるものと解すべきところ、被告人は、仮に原判示第三の別表(犯罪一覧表)1の窃盗の事実を前提にしても、以来約四年五か月もの間、道路交通法違反を除き、ごく普通な日常生活を過してきており、今更掘り起こして起訴されるべき理由もないのに起訴されたもので、このような起訴は、刑訴法二四八条に違反し、不起訴処分の法的性格を無視するものとして無効であり、同法三三八条四号により公訴棄却の判決がなされるべきものであったのに、原裁判所は公訴棄却の判決をすることなく、有罪判決をしているのであるから、原判決には同法三七八条二号前段に該当する違法がある、というのである。

司法警察員作成の犯罪経歴照会結果報告書、被告人の司法警察員に対する昭和五三年五月一日付け、検察官に対する昭和四七年七月八日付け各供述調書によると、原判示第一の窃盗未遂及び同第二の窃盗の事実について、同月二〇日に館林区検察庁検察官が起訴猶予処分をしたことが認められる。ところで、起訴猶予処分は、検察官が刑訴法二四八条に基づいてする終局的な処分であるから、何らの事情の変更もないのに、後日になって、改めて公訴を提起するようなことは厳に慎まなければならないが、被告人は、後に判示するように、原判示第三及び同第四記載のとおり、昭和五一年一一月一八日ころから昭和五三年三月四日ころまでの間に、前後一二回にわたり窃盗罪を犯しており、その犯情、態様にかんがみると、検察官が、事情の変更があったものとして、さきにした起訴猶予処分を変更し、改めて前記窃盗未遂及び窃盗の事実について公訴を提起したのは相当であり、所論のように刑訴法二四八条に違反し、不起訴処分の法的性格を無視した無効な公訴の提起であるということはできない。従って、論旨は、その前提において既に理由がないものというほかはない。

(新関 坂本 小林)

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